科学委員会
KAGAKU       秩父宮記念山岳賞

山岳賞受賞候補者の推薦


 山と学術についてご造詣の深かった秩父宮殿下を記念して、1960年、日本学術振興会と秩父宮記念会により「秩父宮記念学術賞」が制定された。

 当会は当初から受賞候補者の推薦にかかわってきたが、1979年科学研究委員会が設立されてからは、当委が日山協の科学専門委や、当会内の医療委、高所登山委、遭難対策委、自然保護委などとも連絡をとって候補者を選定、推薦状を作成の上理事会に報告の形をとってきた。
 これらはいずれも日山協と共同で推薦が行われたため、受賞率は高く、その後十年間に六件が受賞となっている。
 秩父宮妃殿下は、毎回受賞会場にご臨席になったが、第三十一回式典の際には車椅子でご臨席の上、神奈川工科大学鳥居亮教授グループに対し、「山岳地域での自然エネルギー利用の受賞は誠に喜ばしく思います。このような研究は美しい自然を次代に遺していく為にも意義深いものと伺っております」(要旨)とのお言葉を賜り、当会としても大いに光栄と感じた次第である。

 妃殿下は、翌1995年8月に甍去され、秩父宮記念学術賞の制度は廃止されることになった。
 その後妃殿下より当会に対し、一千万円の御遺贈があったため、当会ではこれを基金に1998年度より、新たに「秩父宮記念山岳賞」の制度を設け、審査委員会が、推薦されてきた優れた登山活動や、山に関する文化的活動を審査の上、受賞者を決めることになった。

 この賞の候補者についても、当委員会は毎年推薦を行っており、これらの推薦とともに、受賞者を招いての講演会も開いて、山の科学の普及・啓発に努めている。

若かりし頃の秩父宮殿下
(1998年晩餐会においてパネル展示)

日本山岳会百年史(続編・資料編)2007日本山岳会刊
 山の科学と日本山岳会(中村純二)より抜粋


秩父宮記念山岳賞 受賞一覧

年度

受賞者

業績
第21回(2019年)令和1 安間繁樹 熱帯雨林における生物調査と探求
第20回(2018年)平成30 小疇尚 日本の山岳景観に関する研究
第19回(2017年)平成29 該当なし
第18回(2016年)平成28 鈴木正宗 日本の山岳宗教と修験道に関する宗教学的研究
第17回(2015年)平成27 平出和也 世界的な山岳登攀と独自の技法による撮影実績
第16回(2014年)平成26 大澤雅彦 「湿潤アジア山岳の垂直分布帯の成立と保全に関する生態学的研究」
第15回(2013年)平成25 飯田肇・福井幸太郎 立山連峰における越年氷河の発見    第15回山岳賞
竹内洋岳 日本人初8000メートル峰14座完全登頂  第15回山岳賞
第14回(2012年)平成24 小泉 弘 「装丁山昧」とこれまで出版した山岳書籍デザインの業績
第13回(2011年)平成23 該当なし
第12回(2010年)平成22 山森欣一 人間に焦点を合わせた、ヒマラヤ登山の実態把握と遭難状況の調査研究
第11回(2009年)平成21 馬場勝嘉 「ヒマラヤ登山記録集成」の著作
第10回(2008年)平成20 川田邦夫・飯田 肇・横山宏太郎 大日岳巨大雪庇の形成機構に関する研究
冬季ローツエ南壁登山隊 冬季ローツエ南壁世界初登攀
第9回(2007年)平成19 松本征夫 崗日嗄布(カンリガルポ)山群の踏査と研究>第9回山岳賞
第8回(2006年)平成18 山本紀夫 アンデス・ヒマラヤにおける高地民族の山岳人類学的研究
    (2005年)平成17 審査なし 日本山岳会100周年
第7回(2004年)平成16 平井 剛 ワハーン回廊の踏査研究
第6回(2003年)平成15 中村 保 東チベット地方の踏査
第5回(2002年)平成14 宮森常雄 カラコルム・ヒンズークシュ登山地図>>>第5回山岳賞
第4回(2001年)平成13 山本正嘉 登山活動における運動生理学及びトレーニング科学の確立と啓蒙
第3回(2000年)平成12 大蔵喜福 マッキンリー通年気象観測とそれを通じての若手登山家の育成   >>>第3回山岳賞
第2回(1999年)平成11 該当なし
第1回(1998年)平成10 三枝礼子 「ネパール語辞典」の編纂
薬師義美 「新版ヒマラヤ文献目録」の作成とヒマラヤ関係の翻訳書の刊行

第一回秩父宮記念山岳賞の展示(1998年晩餐会にて)

第一回秩父宮山岳賞の授賞式(1998年)

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秩父宮記念学術賞 受賞一覧

年度

受賞者

業績
第32回(1996年) 春日俊郎 ネパールの蛾の分類、分布、発生季等に関する研究
大貫良夫 中央アンデス文明形成の先史学研究
第31回(1994年) 神奈川工科大学自然エネルギー利用研究グループ 山岳地域における自然エネルギーの実用化研究
第31回秩父宮記念学術賞
第30回(1993年) ヒマラヤとその周辺の隠花植物調査隊 ヒマラヤの隠花植物相の調査研究
第29回(1992年) 大和久震平 古代山岳信仰遺跡の研究−日光山地を中心とする山頂遺跡の一考察
第28回(1991年) 京都大学ヒマラヤ医学学術登山隊 京都大学ヒマラヤ医学学術登山隊1989・1990年の業績
第28回秩父宮記念学術賞受賞
第27回(1990年) 大井正一 登山に関する気象学の研究
第26回(1989年) 中尾佐助 栽培植物と農耕の起源に関する文化複合の民俗植物学的研究
第25回(1988年) 向山雅重 信州伊那山村における民俗学研究
第24回(1987年) 早津賢二 妙高火山群−その地質と活動史−の研究
第23回(1986年) 宮家 準 修験道の研究

(特別賞)

小寺廉吉 荘川上流山村の変貌に関する研究
第22回(1985年) 藤田和夫 日本の山地形成に関する地質学的・地形学的研究
第21回(1984年) 沼田 真 東部ネパール・ヒマラヤにおける生態学的研究
第20回(1983年) 千葉徳爾 日本における狩猟伝承の研究
第19回(1982年) 五百沢智也 日本アルプス及びヒマラヤ山地における氷河地形及び地誌の研究
 会員五百沢智也氏 秩父宮記念学術賞受賞
第18回(1981年) 岡山俊雄 日本の山地地形の研究
第17回(1980年) ネパール・ヒマラヤ氷河学術調査隊 ネパール・ヒマラヤの氷河と気象に関する研究
第16回(1979年) 白鳥芳郎 東南アジア山地民族に関する調査研究
第15回(1978年) 津谷弘達 富士山の地質学的・岩石学的研究
第14回(1977年) 川喜田二郎 ネパール山地における民族地理学的研究
第13回(1976年) 万木良平 高所医学の研究
第12回(1975年) 原 寛 東部ヒマラヤの植物相
第11回(1974年) 久留米大学ネパール医学調査診療隊 ネパールの医学事情に関する研究
第10回(1973年) 北海道大学ヒマラヤ委員会ネパール・ヒマラヤ地質研究会 ネパール・ヒマラヤ地質研究
第9回(1972年) 辻村太郎 多年にわたる日本の山地地形に関する研究
第8回(1971年) 1970年エヴェレスト登山隊 1970年エヴェレスト登山隊の業績
第7回(1970年) 第九次南極地域観測越冬隊内陸調査旅行隊 南極点往復内陸調査の業績
第6回(1969年) 武田久吉 多年にわたる高山植物の生態に関する研究
第5回(1968年) 藤村郁雄 富士における山岳気象の観測研究
第4回(1967年) 富山大学学術調査団 北アルプスの自然

(特別賞)

京都大学生物誌研究会 カラコルム・ヒンズークシ学術探検隊報告
第3回(1966年) 第一次南極地域観測越冬隊 第一次南極地域観測越冬隊の業績
第2回(1964年) 長野県大町市大町山岳博物館 山に関する科学の進歩についての著しい貢献
第1回(1963年) 京都大学生物誌研究会 ネパール・ヒマラヤにおける学術的調査研究

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