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秩父宮記念学術賞受賞

「山岳地域における自然エネルギー利用の実用化研究」が
第31回秩父宮記念学術賞に

 

 故秩父宮殿下が、日本の学術振興のために、多大の尽力をされた御事跡を記念して制定された、秩父宮記念学術賞の第31回受賞者に、神奈川工科大学自然エネルギー利用研究グループ(代表者・鳥居亮名誉教授)が決定。その表形式が去る3月15日、千代田区丸の内の日本工業倶楽部で、秩父宮勢津子妃殿下ご臨席のもと厳粛に行われた。

 この表形式には、鳥居亮名誉教授(本会会員)、森武昭教授(同)、木村茂雄助教授が出席、沢田敏男日本学術振興会会長・選考委員会委員長が式辞を述べ、久城育夫選考委員会委員の授賞対象となった「山岳地域における自然エネルギー利用の実用化研究」の業績紹介に続き、沢田会長から鳥居名誉教授に賞状、賞牌および記念品の授与、朝日新聞社から副賞金50万円が贈呈された。勢津子妃殿下からは「美しい自然を次世代に残すために貴重な研究であり、今後も健康に留意し、研究活動を続けられるように」との業績を称え、励ましのお言葉があった。

 与謝野馨文部大臣の祝辞は岡崎トミ子政務次官が代読、受貫者挨拶をもって式次第を終え、席を移して祝賀パーティーが開かれた。

 この表形式には、日本山岳会会員ら約200が出席した。

 (高田眞哉)

山599(1995/4月号)


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秩父宮記念学術賞を受賞して

       鳥居 亮 ・ 森 武昭

 

 会報4月号で高田眞哉氏から速報していただいたように、筆者らと木村茂雄氏(非会員)の3名で構成する神奈川工科大学自然エネルギー利用研究グループは、このたび日本学術振興会が制定する平成6年度秩父宮記念学術賞を受賞した

 この賞は、本会名誉会員であった故秩父宮殿下がわが国の学術振興のために多大の尽力をされたご事績を記念して制定された賞である。そして、殿下がとくに山に関して経験豊かで造詣深かったことにかんがみ、「山」に関係
した科学で顕著な研究業績をあげた個人またはグループを対象として、毎年1件授与されている。

 我々の研究グループは、昭和57年から北アルプス穂高岳山荘での風力発電の実験を皮切りに、数多くの山小屋で風力・太陽光・超ミニ水力といった自然エネルギー利用発電の実用化試験や技術支援・助言などを行って、多くの成果を上げてきている。

 現在、自然エネルギーを利用した発電を行っている山小屋は、国内で112か所となっており、荷揚げ量の軽減ばかりでなく、排気ガスや排出物を出さない、環境に優しい山小屋の実現に寄与している。また、このような成果を生かして、ヒマラヤなどの海外登山隊や南極観測拠点での実用化にもいろいろな形で貢献してきた。今回の受賞は、これらの業績を評価していただいたもので、本会のほかに、日本山岳協会、日本太陽エネルギー学会、日本風力エネルギー協会の4学会・協会から推薦していただいた。

 3月15日の授賞式については、4月号で紹介ずみなので省略する。なお、式典終了後、祝賀パーティーが催された。会場では、業績に関係した展示品(太陽電池モジュール、超ミニ水力発電装置、南極で稼働した風力発電装置のプロペラ)や多数の写真を展示し、妃殿下や文部政務次官など出席者へ筆者らが説明するとともに多くの質問にお答えした。

 また、明くる16日には、受賞者3名と本会中村副会長や関係団体の代表が秩父宮邸での午餐会に招かれた。本研究に関する話から始まって、登山一般、秩父宮殿下の想い出、最近の妃殿下のご様子などいろいろなことが話題になり、和やかな雰囲気の中で楽しい一時を過ごすことができた。

 筆者らは、この受賞を励みに、これからも本研究テーマを通して、環境に優しい自然エネルギーの実用化にいっそう努力していきたいと思っています。

最後に、お世話になりました本会の関係各位に深甚な謝意を表します。

山600(1995/5月号)


風力・太陽光ハイブリッドシステム−穂高岳山荘   by鳥居(1985/8/30)

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