植物の不思議(1)

カクレミノ(隠蓑)

カクレミノ

葉っぱでジャンケンができる?

3種類の葉っぱを持つおもしろい木で、卵形のもの、卵形が2つに裂けているもの、3つに裂けているものが1本の中で見られます(若木では5つに裂けているものもあります)。手の形に似ているので、それぞれグー・チョキ・パーの手に見立ててジャンケンで遊べます。
カクレミノという名前は、葉っぱの形が、天狗が消えるときに使う雨具の蓑(みの)に似ていることからつけられたようです。6~7月ごろ、枝の先に黄緑色の小さな花をたくさんつけます。
※触ると体質によってかぶれることがあります。注意しましょう。


タラヨウ(多羅葉)

タラヨウ

手紙を書こう、はがきの木

お寺や神社でよく目にするタラヨウの葉っぱは、歯の裏を、先のとがったもので傷つけると黒くなります。つまり文字が書けるので、昔の人は連絡のために、よくこの葉を利用しました。またお経を書いたり、葉をあぶって占いに使われたので、お寺や神社に植えられているのです。
タラヨウという名前は、古くインドで、タラジュ(多羅樹)という木の葉を乾燥させていたものに文字を書いていたので、そこから名づけられました。郵便局のシンボルツリーとして郵便局のそばに植えられていることが多いので探してみてください。


コバイケイソウ(小梅蕙草)
マルバダケブキ(丸葉岳蕗)

コバイケイソウ

コバイケイソウ 

鹿が食べない植物は毒である

近年、シカが増えているために、山や湿原では多くの高山植物が食べられています。しかし、シカが食べない植物があります。
毒を持っているコバイケイソウやマルバダケブキがそうで、もちろん人間も食べることはできません。植物には身を守るため、毒をもつことで身を守っているものがいくつもあります。ユーカリも毒をもっていますが、コアラは、毒素を分解する酵素をもっているので、ゆっくり時間をかけて毒を消していきます。


食虫植物

ミノムシ

モウセンゴケ 

怖い! 虫を食べる植物

植物の中には昆虫を捕らえて、それを栄養として成長する植物があります。尾瀬などの湿地に見られるモウセンゴケ〈毛氈苔〉は、葉の表面から粘りけのある液体を出し、くっついた虫を酵素で消化して吸収し栄養にします。ムシトリスミレ〈虫取菫〉も同じ方法で虫を捕らえます。
こうした食虫植物はたいてい窒素やリン等が不足しているような、痩せた場所に生息するものが多く、不足する養分を補っていると考えられます。
ツボ型に作られた葉に虫を誘い入れて捕まえるウツボカズラ(靱葛)、葉ではさんで虫を捕まえるハエトリグサ(蠅取草〉や水草のムジナモ〈狢藻〉も昆虫を溶かして養分を得ています。


オトシブミ

オトシブミ

山道に手紙が落ちてるよ

山道を歩いていると、葉っぱが巻かれたようなものが落ちていることがあります。
これは、オトシブミ(落とし文)科の昆虫が、幼虫のために作ったゆりかごで、これを揺籃(ようらん)といいます。
オトシブミ科の昆虫のメスは、木の葉をかみ切り、折り曲げて揺籃を作り、その中に卵を産み付けます。揺籃の多くは、切り落とされて「落とし文」になりますが、木の枝にそのままついている場合もあります。やがて、卵からかえった幼虫は、揺籃の葉を食べて育ちます。
その昔、直接手渡せないような手紙(ラブレターや密告の文書など)は、道ばたに落として渡す習慣がありました。昆虫の行為がそれに似ていることから、「落とし文」と名づけられました。


虫こぶ

ミノムシ

葉っぱに彫刻するすごいやつら

木の葉っぱに奇妙にふくれた部分や変形した部分を見ることがありますが、これが「虫こぶ」です。虫こぶは、昆虫が植物に寄生して、産卵したり様々な刺激を与えることによってできるもので、多くは変型しています。ちょっと気持ちが悪いものがあるけど、実のように丸くなったものや細長いもの、色がつくものなどいろいろあります。
虫こぶをつくる昆虫には、アブラムシ〈油虫〉やキジラミ〈木虱〉、ゾウムシ〈象虫〉、ハエのなかま、ダニの仲間、などたくさんの小さな昆虫がいます。
植物にとっては迷惑な「虫こぶ」ですが、昆虫にとっては食べ物に困らないすばらしい住まいです。猫を酔わせるマタタビの実ですが、虫こぶのついたものだけが効果を持つことが知られています。マタタビの虫こぶは、お腹が痛いときの鎮痛の薬としても利用されます。