12月山行 水沢山(1194m)と水沢観音

日程 2003年12月21日(日)
コース JR渋川駅(10:30〜55)〜タクシーで水沢観音(11:20〜35)―昼食(12:05〜25)―水沢山(13:35〜14:20)―休石(14:55〜15:00)―水沢観音(15:35〜50)―水沢観音バス停(15:55〜16:04)〜見晴下バス停(16:20〜16:38)〜JR渋川駅(17:15)解散
参加者 柴山武(L)、植木信久、菅原紀彦、高橋武夫、辻橋明子、土田常次、永田弘太郎、岡田陽子 8名
交通費 JR渋川駅〜水沢観音@600円
バス(水沢観音〜見晴下200円、見晴下〜渋川駅550円)
JR渋川駅までの往復は各自。
記録 岡田陽子



 平成15年度の忘年山行は上州「小野子山から十二ヶ岳」。年の瀬の一日を“陽だまりハイク”をして、小野上温泉でゆったりと一年の垢を落とす予定であった。ところが、予期せぬ寒気の到来で雪のラッセルに難渋(?)し、新雪の美しさに歓喜(!)する「水沢山」と、「水沢観音詣で」となった。
21日の前々日、低気圧が日本の東海上で発達、強い冬型の気圧配置となり、翌日の午後まで全国的に風が強く、日本海側を中心に広範囲で雪となった。上空の寒気が強すぎたため群馬県水上町の降雪量は80a、長野の野沢温泉でも73a、京都も雪化粧・・・。しかし東京は冷え込んだだけで特別な影響もなく、群馬方面の雪による交通障害などまったく考えもせず、思えば、かなりお気楽な、われわれ一行であった・・・。
当日、早朝5時過ぎ、空には大きな北斗七星、南南西に低く二十六夜の細い月が鋭く光を放っている。好天を確信して上野駅に向かうと、リーダーの柴山さん、菅原さんがすでに高崎行きの3輌目の車両で待っていた。
大宮を少し過ぎたあたりから、登り電車の上に積もっている40aほどの雪が気に掛かっていたのだが、あたりがだんだん雪景色に変わり、高崎では一面の銀世界。構内では雪のため乗り継ぎの電車が大幅に遅れている、とうるさいほどアナウンスが繰り返される。ホームで待つことしばし。深々と冷え込み、冷蔵庫の中にいるように寒い!ここで植木さん、そして新幹線組の高橋さん、辻橋さん、土田さんとは合流できたが、渋川までの吾妻線が遅れており、発車の目処がつかないという。
ようやく1時間と少し待って発車となり一件落着、と思いきや・・・、柴山さんが電車内からタクシー会社に電話すると、登山口近辺はかなりの積雪でタクシーの運行は無理とのこと。かくして急遽、リーダーの判断で「水沢山」に登ることとなった。
渋沢駅着10時30分。1時間15分遅れで到着となり、ここで永田さんとも合流して8名全員が揃った。群馬といえば“からっ風”だが、“雪”の渋川駅で待つこと25分、やっとジャンボタクシーが来た。渋川の街路樹は“栴檀”(センダン)。葉の落ちた枝にたくさんの黄色い実、栴檀坊主(せんだんぼうず)がぶらさがり、その上に雪が積もってなかなか風情がある。
途中の道路上には、昨夜の雪で動けなくなったらしい車が、何台も乗り捨てられている。強い冬型の気圧配置の影響とはいえ、こんなに雪が降ったのは30年ぶりだと聞いた・・・。
水沢観音の境内では社務所の人がせっせと雪かきをしている。これからが一年で一番忙しい時期だろう。観音様への参拝は帰途として、境内を横切り、左手の赤い鳥居から飯綱大権現の社への急な石段を滑らぬように登り始める。のっけから結構ハードだ。お堂の裏手には立派な杉林が続く。昨日は風も強かったのだろう、幹の片側にまだ雪が張り付いている。新雪が降り積もった、緩やかな斜面を今朝がた登って行った人のトレースを辿る。積雪は60〜70aといったところか、吹き溜まりでは1bはある。サラサラしたしまり雪、おそらく−10℃近いだろう。ふだんは軽石が多く歩きにくいという道も、雪のおかげで直登ができて有難い。高度差は6百bほどだが、斜面がきつくなると汗ばんでくる。途中の雑木林の斜面で昼食タイム。晴れた空に新雪が輝いて、樹々の間からは野鳥のさえずりが・・・。年の瀬の慌ただしさを忘れて、みんな幸せそうな顔をしている。そろそろ、早朝登った人々が引き返して来て、我々も先を急ぐ。
岩場の上をまいて通過し、落葉樹林帯の急な登りが続き、頂稜の東端に出た。ようやく南面が開けて、「富士山が見える!」と歓声があがる。前山の上にそびえているので、より高さが感じられる。12体の石仏が行儀よく雪の中に並んでいた。そこから狭くなった尾根を20分ほどたどり、山頂に着く。
山頂には展望指示盤があり、期待どおりの素晴らしい展望が待っていた。近くに前橋、高崎、渋川の街並みと関東平野が一望でき、赤城や谷川岳、尾瀬至仏、燧ケ岳は雪雲の中だが、北に登るはずだった小野子山、そして子持山、上州武尊、東に赤城〜日光白根〜皇海山。南に西上州の山々、八ヶ岳、奥秩父の山々、その上に頭を出した富士山。登ってきた人が「今日は北岳が見える」と教えてくれた。まさに群馬県を囲む山々の大パノラマ展望台であった。
お湯を沸かしてゆったりとティータイム。コーヒー、甘酒で45分ほど至福の時間を過ごす。
下りは、同じところに戻ることにし、アイゼンを着装して出発する。新雪の中を駆け降りる人、尻セードする人ありで、アッという間に駐車場との分岐に着く。最後の急な石段を滑らぬように慎重に下りて、鳥居をくぐって元の登山口に着く。
榛名神社とともに、榛名山を代表する信仰の地である「水沢観音」は坂東三十三観音の16番目の札所。(第十六番五徳山水沢寺。開山=慧灌僧正。開創年代=推古天皇の御代592〜629)本堂を中心として、飯綱権現社や弘法大師堂、六角二重塔などが境内に並ぶ。六角の二重塔は県指定文化財。内陣が回転するようになっており、三回まわして祈願するのだとか。各面には等身大の地蔵菩薩を祀り、楼上には大日如来が安置されている。六道輪廻をあらわしており、元禄年間(1688〜1704)の建立。
水沢うどん”でも知られる。帰りはその水沢うどんの店が連なる「うどん街道」を歩いてバス停へ。伊香保温泉経由で17:15、渋川駅に戻る。私は一寸先を急いだが、皆で恒例の打ち上げをして帰京。
7月に参加した「裏岩手連峰縦走」の地震といい、なにやらご難続き(?)だが、あの時も天候にめぐまれ、「終り良ければすべて良し。」――雪の上州「水沢山」から気高き富士の峰を眺め、「水沢観音」で山の安全を祈願し、いい年の瀬の山行であった。


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