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釼岳「ギワクの水平線」の解明

         関 義治

 AGCレポート VOL-29で板坂さんが疑問とされている
釼岳早月尾根上2610mのピークから毛勝山(標高2415m)を眺めた時、その頂上に日本海の水平線がある理由
東京から距離126km以上離れた日光男体山(標高2486m)と、丹後半島伊根沖から120km以上離れた白山(2702m)が見える理由 の2点について説明します

板坂さんが考察された早月尾根からの水平線は、地面が平面としての計算であり、112km先の日本海に突き当たりますが、地面が無限に平面にあればこの地点が水平線として写像することは無く、写真のフレームで言えば毛勝山のさらに上部まで海は続きます。図-1参照

ところが地球はその字の如く地面は球面です
従って球面体上における視界は図-2のようになります。
ピタゴラスの三平方の定理から

となります

次に早月尾根を通る球の接線と毛勝山の交点の標高xを求めると、@式より
x=2376mとなります。図-3参照


毛勝山の標高は2415mなので、水平線は毛勝山山頂下39mのところを横切ることになります
写真を見ると、その地点を横切って水平線があるように見えます。 
ところが地球面上における視界には、さらに大気による光の屈折があります。 図-4を目にされたことがあると思いますが、密度の異なる物質を通過するとき光は屈折します。


地球上の大気の密度は表面に近いほど大きくなりますので、光路は 図-5の破線のように曲がってしまい、高度角α1のように実際のα0よりも高く測定することになります。
この屈折率κは0.13〜0.14といわれており、その補正値は

で、求めます。 測量用語では気差と称しております

従って、実際の標高の測量には@球差とA気差を足したものを、両差と称して補正を行っております

C式を使って、早着き尾根(標高2610m)から水平線までの距離を再計算してみると、192.842mとなります
先ほどの急さを補正しただけの距離182.350kmに比べ、さらに10km遠く視通できることになります。

次に、日光男体山(標高2486m)と白山(標高2702m)から見える水平線の距離は、各々177.965kmと185.536kmになりますので、120kmは慣れた所からは十分に見えることになります。

これでギワクの水平線は解消されたでしょうか?

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