植物の不思議(2)

葉緑素をもたない植物

ナンバンキセル

ナンバンキセル 

ほかの植物から栄養を奪って成長

多くの植物は、葉緑素で光合成をして栄養を作りますが、葉緑素を持たない種類があります。では、どうして栄養を作るのでしょうか。
ススキの根元に生えることの多いナンバンギセル(南蛮煙管)は、イネ(稲)やススキ(薄)、サトウキビ(砂糖黍)などの植物の根から栄養分を横取りして成長します。こういう植物を寄生植物と呼びます。栄養分をとられた植物は枯れてしまいます。
ほかにも、ネナシカズラ(根無葛)、スナヅル(砂蔓)、ヤッコソウ(奴草)、ツチトリモチ(土鳥黐)など多くの寄生植物があります。中には絶滅が危惧されている種類もあります。


マムシグサ(蝮草)

マムシグサ

植物が性転換って何?

低山のハイキングでよく見かけるマムシグサの仲間には雄株と雌株があり、成長の途中で性転換することがよく知られています。
栄養が貯まると雄株になり、さらに栄養が貯まると雌株になります。そして栄養状態が悪いとまた雄株に戻ります。
栄養状態の良くない地域で生きていくための工夫が備わっています。
葉の鞘の模様がマムシに似ているのでマムシグサという名がつきました。球根や葉には毒があります。


トウチュウカソウ(冬虫夏草)

トウチュウカソウ

虫に寄生してしまうキノコ

キノコの一種には昆虫に寄生するものもあります。土の中で生活する幼虫の体内に侵入し、昆虫の栄養を吸収してどんどん成長します。栄養を取られた幼虫は死んでしまい、キノコは幼虫を突き破り地上に頭を出します。
チベットからネパールの高山帯に見られるものは、冬虫夏草(とうちゅうかそう)とよばれ不老長寿の薬として昔から貴重でした。
昆虫にはセミやクモ、蛾の幼虫、トンボなどが選ばれています。なお最近では、虫がついていない冬虫夏草を人工で栽培しています。


樹齢(じゅれい)の分からない木

何歳?

あなたは何歳? 年輪のない木がある

樹齢を調べる方法として、年輪を数える方法がよく知られています。年輪は春のように成長の早い時期と、夏のように成長がゆっくりの時期とで、細胞の密度が違ってくることによって作られます。四季がはっきりしている日本では、色の薄いところは春から夏にかけて作られ、色の濃いところは夏から秋にかけて作られ、冬は成長が止まります。
つまり温帯や亜熱帯など季節がはっきりしている地域や、乾期・雨期などがある地域では、成長速度に違いがあり、年輪ができます。
ところが、一年中同じ季節では木には年輪ができません。熱帯樹林のような場所で育つ、ラワンやヤシなどの木には年輪がありません。


ヤドリギ(宿り木)

ヤドリギ

木の上で育つ植物

ヤドリギは、他の木の上で発芽して、その木から栄養をもらいながら生長します。常緑樹なので他の木の葉が落ちても残っています。
ヤドリギの果実は鳥に食べられられ、鳥の腸を通り抜けて、木の上に落ちます。ねばねばしているので樹皮に張りつき、そこでまた発芽して木の中に根を下ろし、寄生をくりかえします。冬、木の上を探すと、大きな鳥の巣のような、緑色のヤドリギの固まりが見つかるかもしれません。
ヤドリギは葉緑素でも栄養分をとるので、半寄生植物と呼ばれています。ブナやエノキ、クリ、アカシデ、ミズナラなどに寄生します。


チングルマ(珍車、稚児車)

チングルマ

草よりも低い木って?

美しい高山植物には、樹木も多く含まれています。たとえばチングルマ。茎がわずか1ミリ太くなるまでに10年かかるといわれています。
その他にもバラ科のイワシモツケ(岩下野)、チョウノスケソウ(長之助草)。またガンコウラン(岩高蘭)、ウラジロヨウラク(裏白瓔珞)など多くの樹木があります。
では、木と草の違いは何でしょう。
「幹・茎が成長する(太くなる)かどうか」、「地上部分が1年で枯れるかそれとも何十年も残っているか」など言われますが、中間的なものも多く、明確には区別できていません。