Climbing and Medicine 会報 山 医療コラムより
701号

登山と食事―日頃の食事が健康登山の決め手−

百々瀬 いづみ

(26)登山と食事―日頃の食事が健康登山の決め手−

 登山では、荷物の軽量化が優先されるために、消費エネルギーに見合う十分な栄養素が摂取されていないことが少なくありません。水分量についても、山では口渇感が鈍感になることや飲料水を取り出す時間の節約から、消費・排泄に相応した、適時・適量摂取ができていない場合が多いようです。

 水分や糖質、その他必要な栄養素が補給できる食品の携行が望ましいことは、言うまでもありません。しかし、軽量で高エネルギーの食品は、脂肪やたんぱく質が多く、消化機能が低下した山では食べにくいものです。このような点から、ご飯などの穀類や果物は食べやすく、消化面からも好ましい食品と言えます。

 また、摂取した糖質や脂質を効率よくエネルギー変換するために、摂取エネルギーに見合う量のビタミンB1、B2が必要です。これらが多く含まれる代表的な食品には豚肉(ハム類)、ナッツ類、みかんなどがあります。糖質や脂質から十分にエネルギーが供給されると、たんぱく質(筋肉)の分解を最小限にし、登山後の体重減少、疲労感を少なくすることができます。

 登山後の食事では、疲労物質の乳酸やケトン体を除去するとともに、消費したグリコーゲンと損傷した筋肉を回復させることが重要です。そのためには、できるだけ早いタイミングで、糖質、クエン酸、たんぱく質を補給することが必要です。レモンの水飴漬やレバー、ハム類の薫製などがお勧めです。

 また、日頃の食生活に配慮し、欠食や偏食をせず、健康な身体づくりをしておくことも重要です。栄養素不足の身体で登山すると、健康を損なう恐れがあります。日頃の食卓に、毎食ごと主食(穀類)、主菜(たんぱく質食品)、副菜(野菜類)の3つの料理をそろえるように心掛けると、栄養素のバランスが整います。夕食は比較的、バランスが良い人でも、朝・昼食は不規則、アンバランスが多いようです。日頃からの心がけが、山でも健康により楽しく過せることにつながるでしょう。

(本稿は第23回日本登山医学会(平成15年5月)のシンポジウム「登山と栄養」で発表されたものの要旨です)