会報3月号より



日本山岳会学生部・刊
「日本山岳会学生部ムスタン遠征2004報告書」

久しぶりに出た、本会学生部のクリーンヒットと言うべき遠征の報告書。千葉、早稲田、立教、学習院の各大学から集まった5人が、短い準備期間にもかかわらず、やる気とチームワークと周囲の協力などの追風にも助けられて、未踏峰に登頂するという痛快な記録である。
 計画から実施まで、外部にはほとんど知られていなかったが、登ったと聞いたときの中堅オヤジOBや青年部の反応は、「今時、そんな山があったのか!?」「スゴイ着眼点!」「上手くやりおったのー!」といった意外性を評価する声が多かった。
 しかし、中高年のにわか登山隊が、簡単に登頂できるものではないことは、断っておく必要があると思う。和田隊長は早稲田が偵察しながら実施できなかった計画を拾い上げて、自分の間合いに合うと思ったところで、隊員を物色し一気に実行に移していく。文中には現れないが、学生部、指導委員会や各大学山岳部の後方支援も相当あったと思われる。
 現在の学生気質に悲壮感はない。遠征といってもこの5人はチャンスがあればまた来年も行くだろう。各大学の同好会でもヒマラヤ・トレッキングへ行く者は多い。山岳部こそ「伝統」という呪縛にとらわれていたのではないだろうか。
 和田隊長が「全員が登頂できると思われる山」を選んだり、千葉大学の吉永監督が「やらせればできる」としているのは、大学山岳部はもはや夜が明けて明るくなっているぞ、と言っているようなもので、部員が少なくて代が抜けていても「連合軍」を構成するノウハウがあれば、学生も指導者も悲観することはないのである。
 彼らが90年代後半からの学生部のそうした流れを受け継ぎ、次代に伝えていこうという熱い思いは容易に読みとれる。しかし、それこそがヒマラヤより困難な障壁であることは会員の大多数の生き様に現れている。負けるな! ワカゾー!
 彼ら自身が語るように、目指す山頂はまだずっと先である。やめたくなる日もあるだろう。しかし、老若男女に拘らず山岳会員が進み続けられる原動力は、平林副会長が巻頭に述べているところにあると思う。
「何ごともそうでしょうが世界で初めてということが、事の大小に拘らずどれほど大変なことか、そこは誰しも経験したことのない、辛く厳しい未踏の分野が広がっているからであります。」

(野沢 誠司)

2004年12月 日本山岳会学生部発行 138ページ 
(送料別2000円で頒布。申込はFAXかハガキで日本山岳会事務局まで)


日本大学山岳部、桜門山岳会・編
『日本大学山岳部八十年の歩み』二〇〇四年創部八十周年記念号

1924年の創部以来山岳部の卒業生は419人、桜門山岳会の現在の会員数は258人とある。内外に大きな足跡を記している日大山岳部の記念誌である。
 第1章の『通史』には「山あり谷あり。行き詰まりー打開ー行き詰まりの繰り返し」の歴史が60ページにまとめられている。創部から1955年ころまでをとくに詳しく書き込んだという。歴史の古い山岳部はどこでもそうだが、高齢化に伴い、いま確認して残しておきたい記録にスペースを割きたいということだろう。
 第2章は『戦前OBの回想録』。初見一雄さんの「常さん」を味わい深く読んだ。初出はJAC会報の『山』で、昭和42年12月から12回に分けて連載された。徳本峠越えで出会った「上高地の常さん」との親しい付き合いを語る軽妙洒脱な文章が古きよき時代を回想させる。編集者は初見さんの数多い文章の中からとくにこの一文を選んで収載したと思われる。どちらかといえば堅い文章が多いだけにほっとさせられる。
 戦前、戦後、国内での『山行記録』に続いて第5章は『海外登山活動』である。桜門山岳会の3つの柱とされる「ヒマラヤ」(筆者は松田雄一さん、神崎忠男さん)、「南極」(平山善吉さん)、「北極点」(池田錦重さん)に、会がどう関わってきたかが詳述されている。
 日大OBによる日本山岳会「山日記」への編集協力がマナスル登山への参加に通じ、その後長い道のりを経て1995年(70周年記念登山)のエヴェレスト北東稜初完登で結実する。
 こうしたヒマラヤへの道とは別に、8人の犠牲者を出した1954年11月の富士山雪崩遭難が、合同捜索本部でいっしょだった東大山の会との縁で南極観測隊参加につながり、南極で育まれた極地への関心がグリーンランドから北極点への計画に進んでいった。《極地の日大》の面目躍如であり、記念誌だからこそすっきりと見通せる会の大きな流れである。
 『付表』として「年次別積雪期主要山行年表」」海外登山年譜」「関連図書(会報総目録ほか)」などがあり、よく整理されていて参考になる。
 「当部には数多くの部内誌が残されているが、対外的にその活動を報告されているものは少ない」という日大山岳部の、貴重な80周年記念誌である。

(成川 隆顕)

2004年11月刊 275ページ (2500円で頒布。申込は日本山岳会事務局まで)


新葉社・編
『奥天竜ろまん紀行』1億年の旅ー南アルプス

南アルプスをめぐるミステリアスな魅力がよみがえってきた。今まであまり知らされていなかった天竜川の中下流域や三遠信(三河、遠州、南信州)地域の自然、歴史、文化などがその舞台。珠玉の文章と迫力ある写真とで構成された驚きの臨場感だ。
 執筆陣には現地に入り、目で見、肌で感じた現在の姿をリポートしてもらったという。新鮮な感性と遊び心とが、読者のロマンを呼び起こす。
 本書は全6巻、まずは第1巻の刊行だ。 
                
(田畑 真一)

2004年5月 新葉社発行 144ページ 2200円 
問合は発行元へ
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