会報8月号より


佐藤利幸他・編
『信州大学山岳科学
総合研究所年報第1号』
信州大学山岳科学総合研究所・編
『山に学ぶ 山と生きる』

信州大学に2002年、山岳科学総合研究所ができた。「山岳文化とエコ・ツーリズム」「山岳基礎科学」「自然と人間共生」「登山・スポーツ」の研究活動からなり、多数の研究者を擁している。本書はそこの研究年報と解説叢書である。
研究所ができてすぐ95編もの報告書を出せたのは、「ああ信州よ山の国 誇りは高しアルペンの……」と寮歌に歌った旧制松本高等学校の流れをくむ信州大学であればこそ、常々あらゆる分野において山との関連の研究が行われていたことを物語るのではないかと思われる。
『山に学ぶ 山に生きる』所載の梅棹忠夫さんの「山と学問」は登山の基本を語る原典として永く読み継がれるべき名著である。
日本山岳会のすべての会員に読んでもらいたいと思う。
山岳図書の小谷コレクション7千冊がこの研究所に寄贈された。
エコ・ツーリズムについて「多角的な視点から評価されることによって、エコ・ツーリズムの在り方の議論がより深化することが期待される」と記載されている。
       
(松丸 秀夫)
2003年3月発行 185ページ
2003年5月31日 信濃毎日新聞社発行 270ページ 1900円



『The Himalayan Journal Vol.59, 2003』

 創立75周年を祝ったThe Himalayan Club(本部・インド・ムンバイ)の機関誌である。
 巻頭、論文・登山報告、遠征、書評、追悼に大別しており、巻頭の中には、ヒマラヤの先駆的登山と地理的発見に貢献したことが評価され、(英国)王立地理学会・パトロンズメダルを受賞したカパディア当誌編集長の授賞式でのスピーチを載せている。
 論文・登山報告ではエヴェレストの現地名研究、ヒマラヤと人類の生成、カトマンズ国際映画祭でのダグ・スコットのスピーチなどとともに幅広くヒマラヤ全体の登山報告がある。東カラコルムやガルワルなど6000〜7000m峰の初登頂や新ルート開拓などが並ぶなかで中村保氏の「チベットのアルプス」、日・印合同隊総隊長カパディア氏と登攀隊長坂井広志氏の「シャイヨーク川とヌブラ渓谷横断」、「パドマナブ初登頂」が目を引く。また、カパディア氏による「カラコルムの王様」は、登山の縁の下の力持、ロバたちを温かい眼差しで観察した一文も興味深い。
 遠征欄では、インド隊を含め各国からの登山隊情報が盛られており、印・パ両国登山隊がUIAA
などの支援でスイスのメンヒに一緒に登頂した嬉しい話もある。邦人による情報提供も多く見られ喜ばしい。
 書評ではメスナー著「ヘルマンブール」など27点を紹介。また、1924年マロリーとアービンが帰幕しなかった英国エヴェレスト隊に参加し、34年ナンガ・パルバットでドイツ隊が大量遭難した時に、ただひとり第4キャンプに帰還したアンツェリン氏を追悼している。貴重な写真や地図も多数あり。      

(南井 英弘)
The Himalayan Club 2003年9月発行 292ページ