会報8月号より


高澤光雄・編

『北の山の夜明け』

北海道の山に関する研究資料集。昨年5月の刊行だが、最近本会図書室に納められたので紹介する。 
 @ジョン・ミルンの千島列島および北海道旅行(水野勉)、A阿倍比羅夫の後方羊蹄山遠征について(高澤光雄)、B黎明期の北海道山岳文学(田中恒寿)、C北の山の詩人・井田清(清水敏一)、D北大スキ‐部と冬季登山(中浦晧至)、E鳥瞰図・展望図・対景で見る「北海道名山図絵」(藤本一美)という本文に、F蝦夷地山名辞書稿?松浦武四郎文献を中心に?(高澤光雄監修・渡辺隆編著)、G神保小虎の明治期における北海道の地質調査とアイヌ語山名(松田義章)、H明治前蝦夷地探検開拓史年表(高澤光雄編)という魅力的な内容。
 @は明治初期、日本の地質学・地震学を指導したイギリス人の千島と北海道調査を跡付け、解説。
Aは『日本書紀』に登場する人物と後方羊蹄山とのかかわり、さらに松浦武四郎の事跡の謎を追う。Bは大町桂月、大島亮吉、伊藤秀五郎の3人から北海道の山の文章をたどる。Cは北大山岳部出身、戦前アルプスにも登っているが、不明部分の多い人物の追跡。Dは北海道の冬期登山初期の紹介。Eは松浦武四郎、谷文晁から現在まで北海道の山を図絵の面から整理。 F〜Hは詳細な資料集。
 どれも読みごたえがあるが、Aでは阿倍比羅夫は蝦夷地にはきてないとか、松浦武四郎の後方羊蹄山登山はフィクション、山名語源説への疑問などが紹介されている。後半の資料集とともに北海道の山に関心のある人は目を通しておいて損はない論考ばかり。申込みは後記へ。

(大森久雄)

 2002年5月 日本山書の会発行 約324ペ‐ジ 別丁図版5点 
 発売・〒001‐0010 
 札幌市北区北十条西4丁目 п彦AX 011‐746‐2940 サッポロ堂書店 
 3000円



坂口貞男・著

『熊野 山ごよみ』
 
 和歌山県南部の山村大塔村で昭和4年に生まれ、山仕事に就いたのが11歳のとき。以来60年近く山暮らしをし、山を下りたのが4年前。現在73歳になる”山びと”の熊野の山を知り尽くした古老が語る、山暮らしの知恵の数々。
 厳しい山の生活で刻々と変化する自然の中で接した植物や動物の話、木の話、天候の話、山の神の話など素朴な紀州弁で語られる、今では失われてしまった日本の原風景とでもいうものが見いだせる1冊である。
 内容は書名どおり、熊野の山暮らしを1月から12月までに区分し、月ごとに5つの話がとりあげられている。
 1月「しもやけにはスギヤネ」、3月「ムササビの布団干し」、5月「ミミズの熱さまし」、9月「イタチが横切ったら仕事は中止」など、いずれも興味深い話の数々である。
 序文で著者が「四季折々の山暮らしについて、大変やったこと、愉快やったこと、驚いたこと、なるほどと思ったこと、昔の人の生きる知恵や工夫みたいなもんも、よおけ入っとるはずや。『昔の人はこんな苦労したんやなぁ。そやから今、みな、こうしておられんやなぁ』そんなふうに少しでも何か感じて読んでもらたらと思うな」と語っている。

 (大橋 晋)

 2002年11月 角川春樹事務所発行 222ペ‐ジ 定価1900円



立教大学山岳部・編

『部報第11号』
(1983〜2000年)

 最近の18年間の活動をまとめた部報である。さる5月24日、セントポ‐ル構内で行われた「創部80周年記念祝賀会」で出席者に披露された。
 第1章は「海外登山報告」。1987年秋の学生中心のナンダコ‐ト再登頂、1993年のチベット・チョモロンゾ登頂、98年4月から8月にかけてのガッシャブルムU峰登山、当時としては珍しかった学生だけのネパ‐ル合宿などが収載されている。第2章は剣や槍・穂高などで行われた15の国内登山の報告。 
 もっとも「報告」として採り上げられているのは92年の冬山まで。以後はスケ‐ル的にも1週間を超えるような山行がほとんど行われていないためか、現役部員たちの記録は第3章のクロニクル(年録)で参加者、日時、コ‐スが略記されるにとどまっている。年録からは93年以降、立教もご多分に漏れず、部員数が極めて少ないことが読みとれる。
 第4章「足跡」は3つの座談会でOB、部員たちの歩みの節目を辿っている。「立教の山」と呼ばれるナンダコ‐トへの1987年の再登頂が、堀田弥一さんら50年前の初登頂者らを交えて語られ、採録されている。ヒマラヤとの関わりを歴代のOBが語るシンポジウムがあり、さらに「歴代主将が語る山岳部の歩み」で、18年の活動の背景にある時代の流れや山登りに対する考え方、部の雰囲気が、ざっくばらんに披露されている。話があちこちに跳んだり内輪話に過ぎるところもないではないが、先輩後輩の自由かつ率直なつながりもよく見えて、逆にそれが面白い。もちろん、真面目な将来展望で締めくくられている。

(成川 隆顕)

2002年6月 立教大学山岳部発行 400ペ‐ジ A5版 3000円(送料共) 購入希望者は加計まで(FAX 044‐852‐3851)