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20回全国支部懇談会「十和田湖集会」開催される

 

 全国支部懇談会「十和田湖集会」(平成1591314日)が青森支部主催で開催された。台風14号の接近が懸念されるなか、北海道支部から宮崎支部まで、全国津津浦浦(23支部と首都圏を含む)から約210名の会員が奥入瀬渓流第二グランドホテルの会場に集い、全国支部懇談会としては、最大規模となった。今回の青森県における開催は初代青森支部長(故)松島静吾氏の願望でもあった。

 

 集会第一目の午後、平山善吉会長による「これからの日本山岳会」と題する記念講演が集会の幕開けを飾った。まず、十和田湖の東方にある新郷村で毎年行われているウエストン祭が話題にあげられた。宣教師であり、登山家のウォルター・ウエストンは明治36年(1903)、青森地方を襲った極端な冷害による大凶作のことを新聞報道で知り、当時、横浜在住の外国人に救援募金を呼びかけた。さらに、ウエストン自らも当地に足を運んで、二十日間にわたって被害状況を視察。そして、地域住民へ物資の支援などをとおし、救済の手をさしのべた。このように、余り知られてはいないが、ウエストンとこの地には深いつながりがあること、そして、師が伝えたのは「奉仕と博愛」の精神であったという説明がなされた。さらに、話題は二年後に迫った創立百周年記念事業に移った。この記念事業は様々な企画を通じて日本山岳会の歴史を振り返ると共に、これからの新しい会のあり方を考える良い機会でもある。そして、記念事業を成功に導くには、特に支部の協力が不可欠である。会員が互いに協力しながら日本山岳会の将来のビジョンを構築していきたいものであると結ばれた。

 

 続いて、根深誠氏(青森支部長)による「ネパールにかける橋と雪男」と題したスライド映写による講演。根深氏は中国との国境に近くにあるネパールの山村で、壊れかけた木橋を鉄橋に架け替えるプロジェクトを進めている。その一方、雪男にまつわる伝説や証言を1973年からヒマラヤ各地で集め歩いてきた。また、「雪男の足」といわれる資料までも入手し、専門家に鑑定してもらった。その結果、雪男はヒマラヤに生息するヒグマであると結論付けた。

 

 さらに、青森支部が日本山岳会創立百周年記念事業として取り組んでいる「白神山地ブナ林再生事業」について、村田孝嗣プロジェクトリ−ダー(青森支部会員)から報告がなされた。ユネスコ世界自然遺産に指定された白神山地核心部への登山口となっている櫛石平(赤石川流域)は不成績スギ造林地である。青森支部は鰺ヶ沢森林管理署の許可を得て、1999年から除伐などを施し、造林地に自生する高木広葉樹の生育を助ける作業や、ブナの少ない場所には現地苗を移植する作業等を地元の農業高校の生徒など若い世代に声をかけながら、一緒になっておこなってきた。これまでの活動の展開と成果についてパソコン画像を用いて解説。これから100年ののち、きっと蘇るブナ林を未来の世代に残したいと力説。

 

 夕方より、風雨強まる。ホテルの窓から外に目をやると、雨水は屋根から滝のごとく流れ落ち、樹木は折れんばかりに暴風に揺さぶられ、明日の山行がはなはだ危ぶまれた。しかし、懇親会会場では宴たけなわとなり、津軽三味線が嵐に負けじと鳴り響き、全国の銘酒や肴にかこまれた会員の歌声や話し声があふれていた。そして、その勢いは二次会にまでおよんだ。

 

 第二日目は小雨と風で夜が明けた。しかし、心配された台風も夜半のうちに日本海北部から北海道の東海上へと移動して温帯低気圧となり、その勢力を弱めていた。速い雲の流れの中に時折、青空が顔を見せている。十和田山登山グループ、ハイキンググループ、観光グループに分かれ、それぞれ、支部会員のガイドで初秋の十和田湖周辺を味わう山旅に出発。十和田山への登山には約140名が参加し、子ノ口から刈払われたばかりの道を十和田山山頂(標高1054m)に向かった。山頂では待機していた青森支部会員による炒れたてのコーヒーがふるまわれ、十和田湖の展望を目と香の両方で味わって頂いた。その後、宇樽部へ下山(累積標高733m、歩程6.5km)。一方、ハイキンググループには約40名が参加し、蔦トンネルからスタート。遺伝子保存林に指定されたブナを主体とする深い森に分け入り、台風による生々しい倒木をくぐって、透明度抜群の赤沼へ至った。ここから、みごとなコメツガの生育する松森山(標高804m)を経由し、大小の沼めぐりをしながら蔦温泉へ下山(累積標高282m、歩程6.2km)。また、観光グループには約20人が参加。八甲田の山々を望む展望所として知られ、アオモリトドマツの香に包まれた睡蓮沼(標高990mの高層湿原)の探訪にはじまり、ひなびた谷地温泉での入浴、そして、奥入瀬渓流の瀬音を聞き、秋の足音を感じながらの散策。そのあとは、遊覧船で十和田湖上より十和田山を含む外輪山の風情をたんのうして頂いた(所要約7時間)。

 

 参加者全員、山旅の無事終了に感謝。十和田湖集会場をあとにする車の窓から、参加者ひとりひとりが振るサヨナラの手と再会を誓い合う笑顔がとても印象的であった。次回の全国支部懇談会は熊本支部主催で開催される予定である。また、平成16年度の北海道・東北・越後支部懇談会は北海道支部が開催を予定している。(文責 青森支部 鈴木邦彦)

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