2005年1月号
新しい年の始めに――100周年を成功させよう
 
平山 善吉
 



新年あけましておめでとうございます。皆様お揃いで良い年をお迎えのことと存じ、慶賀にたえません。
今年は日本山岳会にとって記念すべき100周年の年であり、これを成功させるとともに、本会の歴史をさらに輝かしいものにするため、100周年のあとに来る100年、あるいは200年に対し、大きな飛翔台にしたいと思います。このためには、皆様のさらなるご支援、ご協力をお願いし、共通の目標に向かって心をひとつにし、協調し、努力しなくてはなりません。
100周年の記念事業につきましては、会報『山』の100周年ニュースに、その経過について述べ、また、先の年次晩餐会においても申し上げましたので、ここでは簡単にふれてみたいと思います。
ご存知のように、100周年の事業は、大きく分けて登山と文化事業があります。これは、私たちの先達が日本山岳会は山に登ることが本来の目的であれども、山を通じて文化も学ばなければならない、と言ったことに基づいているからであります。
まず、登山について申し上げますと、今までのように周年ごとの大きな登山は企画いたしませんでした。これは、登山界をとりまく環境が大きく変化し、かつてのようにヒマラヤの未踏峰だけが対象であった時代から、最近では、身近な登山、あるいは高齢者登山などが主流となったからであります。しかし、世界には未知な地域もまだたくさんあります。この未知の地域へ向かうパイオニア的登山にに対しては、その規模、形態を問わず、これからも支援していきたいと思っております。
このようななかにおいても、100周年のためにいくつかの登山隊を派遣しました。それらは、東海支部の厳冬期ローツェ南壁登山であり、関西支部の西チベットの広い地域を対象とした登山であり、学生部のムスタン山域への登山であります。これらの登山隊は、それぞれ困難な山に立ち向かい、あるいはいくつかの未踏の頂に立つなど、すばらしい成果をあげておりますが、その概略につきましては、会報『山』に報告されておりますので、ここでは省略いたしますが、これらの登山は皆若い隊員によって構成され、なかでも学生部の登山は、若者へのヒマラヤ登山が消えそうなときに、学生だけで企画、立案、実行したことに対し、特に敬意を表するとともに、このような登山をこれからも大いに奨励、支援したいと思います。
また、このような海外登山とは別に、国内においては大分水嶺踏査計画が着々と進んでおります。現在、全行程の約35%が踏破され、この経緯も会報『山』に報告しております。
私は、この登山と対局に自然保護をおきたいと思っております。これに関してはご異論のある方もおられるかと思われますが、現在の活動は各方面から高く評価され、それらは青森支部の「ブナ林の再生」であり、東京の「高尾の森づくり」ですが、これに加え、100周年記念として東海支部で「猿投の森づくり」が始まりました。これらは、日本山岳会でなければできない事業であり、これからも大事に育てていきたいと思います。
次は文化事業ですが、その目玉は『百年史』だろうと思います。これは、今日までの埋もれた資料をこの100年を契機に全部掘り起こし、正に「100年の歴史」を目指し、今までほぼ10年の歳月をかけてまとめようとするものです。日本山岳会においては、このような歴史こそ大切であり、これを記録として後世に残すことは、我々の責務だろうと思っております。また、これに類する出版物としては、『英文ジャーナル』、そして全支部から原稿をお寄せいただきました『新日本山岳誌』等々がございます。
文化事業はこのほかには、本会の誇る貴重な図書、絵画を飾る展覧会があり、この絵画のなかには会員の松崎中正さんから、特に100周年のためにご寄贈賜りました、希少中の希少本としての、シュラギントワイトの絵画の一揃(詳しくは『山』715号参照)などもございます。
このほか、いろいろな事業がございますが、特に100周年のためにルームを改装し、「談話室」のようなものを作りたいと思っております。これは会員が気軽に立ち寄り、クラブライフを楽しむ場としてご利用いただき、あるいは地方の会員が上京したときお休みいただくなど、皆様の交流、くつろぎの場になることを願っております。
このように100周年の準備は着々と進んでおりますが、最後に記念式典は、全国を8つのブロックに分けて、各ブロック別式典、あるいは行事を行い、これらの総括として10月15日には、東京において総合式典を催したいと思っております。 そして、この100周年のあと、日本山岳会はどうあるべきか、目下この件につきましては、長期ビジョン検討会(委員長・田辺寿会員)を設け、検討中でありますが、委員会からの答申(4ページ参照)を受け、現在これを実行すべく理事会において検討中であります。3月号の会報『山』にはその考え方を示し、本年の総会でおはかりし、できるものから実行に移したいと思っております。
そこで、この機会に100周年のあとに来る日本山岳会の第二世紀はどうなるべきかについて、若干私見を述べたいと思います。
今、我が国の登山界をとりまく環境は、登山者の高齢化が進み、かつて私たちが求めた「より高き未踏の頂を目指す」というものから、広く大衆化し、これがその主流となりつつあります。私はこれを多くの人たちの求める登山であるとは思いますが、日本山岳会は「伝統を重んじ」、「より困難な頂を求める」人たちと「大衆化登山を目指す人たち」との共存の道を探らなくてはならないと思います。
しかし、このような登山は強要するものではなく、山岳会の生活のなかから醸成されるべきものであり、このためにも元気な、正統的な若者を育て、ここから芽生えた計画に対しては、これを大切にし、本会の持てるノウハウを提供し、協力したいと思っております。このためにも、いわゆる若返りこそ急務であり、この若返りは、十分に高齢化と共存できるものと思います。それは、高齢者の社会経験と、若者の活力が、日本山岳会の伝統という大きな流れのなかで、相補完し、片方にかたよらず、その相乗効果によって、日本山岳会の新しい時代は創られるはずです。
また、このような考え方を生かすのは、組織、すなわち理事会の活性化です。このように私は、組織が活性化されるような改革こそ必要であり、理事会は活発な議論の場にするべきだろうと思います。このためには、いくつか乗り越えなければならない困難な問題もありますが、この改革こそ100年だからこそできる改革であり、できるだけ多くの皆様から意見を聞き、若返りと活性化につとめたいと思います。
幸い、本会には多士済々の会員がおられます。今こそ英知を結集し、活力に満ちた、若々しい会を築こうではありませんか。
 本年も変わらぬご支援とご協力をお願いし、年頭のご挨拶といたします。