2003年12月号
第13回山を語る
エヴェレストから富士山が見えた
図書・自然保護委員会共催
 
エヴェレスト清掃登山に取り組んできた野口健氏を講師に招き、10月10日、東京都体育館で講演会を開催した。概要は以下の通り。

このたびは日本山岳会から講演の招聘を受け光栄に思う。七大陸最高峰登頂の最終目標エヴェレストに行った時、そこには写真や映像になかったゴミ、空ボンベなどがたくさん散らばっていた。しかし登頂を成功させることに夢中で,環境問題を深刻に考えていなかった。

ベースキャンプで国際公募隊がゴミ集めを提案した。ゴミの中に日本隊が残したものがたくさんあり、作業していたヨーロッパ人たちから「経済は一流、マナーは最低」と日本を否定され、「エヴェレストを富士山にするのか」など強いバッシングを受けた。メスナーが富士山を世界一汚い山と言っていたらしく、夏の富士山に登って初めてメスナーの言葉が理解できた。環境問題提起のために持ち帰ったこれらのゴミを都庁で展示したところ、日本の山岳界に対する批判と受け取られたのか、脅かされたこともあった。

2000年3月、8000mでゴミ拾いを提案したところ、シェルパたちから拒否された。元々カースト制度のある国で、シェルパは清掃業の階層でない。担ぎ下ろしたゴミの重量に対して対価を支払うボーナス制度を採り入れるなどで説得した。それが3年目には彼らが他隊のシェルパにゴミ問題で注意するまでになった。超高所で作業をする限り、身体を壊し亡くなるシェルパもおり、一時は清掃登山を止めようとしたが、「自分たちのネパールの山を美しくする作業だ、続けたい」と頼まれた。

4年間で7・7トンのゴミを持ち帰った。山でのゴミ処理マナーはその国のマナーレベルと一致しているようだ。今年の東京農大隊はローツェ、エヴェレストの両峰に登頂する快挙をなすとともに炊事水を流す時に濾過器を通すなど環境面でも万全の配慮がなされた。

富士山は頂上に自動販売機が並ぶなど世界に例のない山だ。どこの山小屋でもゴミとトイレ問題には手を焼いている。「プチ富士が日本中にあるので、富士山が変われば日本が変わる」と思う。富士山麓で開講している自然教室で学んだ子供たちに、環境メッセンジャーになって欲しいと願っている。

シェルパの中には命を落とした人も多い。しかし遺族への補償は不十分で、彼らの子供を支援する「シェルパ基金」を設けた。

終わりに自然保護委員会篠崎仁担当理事が、野口健さんの活動と自分たちの活動に何か接点がありそうだ、今後、協力できるものがあれば一緒にやっていきたいと述べた。聴講者80人。(南井英弘)