2003年9月号
カングリ・シャール シニア登山隊
朴本鍾徳
 
 事業委員会(旧集会委員会)ではこれまではJAC会員を対象に関東近辺のミニ登山を中心に活動してきた。近年は北海道の知床連山、屋久島の宮之浦岳、青森の白神山地などへと活動エリアを広げてきたが、こうした登山の中から“次回は海外へ”という空気が醸成されていった。高齢化社会のご多分にもれず本会も会員の8割強が50歳台以上、平均年齢は61歳となっている。このような現状を踏まえ、本会初の試みとして「シニアを対象にした公募隊でヒマラヤの初登攀を」という計画ができ上がった。

 募集条件は55歳以上で本会の規模の大きい登山隊参加経験のないこと、などとしたが全国各地から30名を越える応募があり、会の今後の方向性が感じられた。登山対象は東部ネパールの未踏峰としたが、直前になって対象の山を変更するハプニングもあった。また応募隊員も面接、山行合宿などで絞り込んだが、家庭の事情などで断念せざるを得ない者が出るなど難航した。最終的に隊員10名、この中にはヒマラヤのベテラン、ヨーロッパアルプスの北壁登攀者から40年ぶりの本格登山となる者などなど、力量、知識、経験がバラバラであり、弱小きわまりない登山隊となった。

 対象はカングリ・シャール(6811m)クーンブヒマールのチベットとの国境稜線上にコルを隔ててプモリに隣接する要塞を思わせる巨大な岩山である。過去に挑戦した登山隊もなければ記録も皆無である。この山に挑戦するのは我々が第1号であり「山登りの原点」としての妙味もあった。ルートはプモリを分かつ氷河にとり、コルに抜け出て国境稜線をたどろうとしたが、コルへの氷壁に基部に巨大なクレバスがあり、そこが最高到達点となった。次回はこのクレバスにラダー(梯子)をかけて突破し氷壁に取り付くことができれば初登頂の夢も実現するだろう。ともあれ今回の初めての試みが、登頂できないまでも、事故もなく終了できたことは、うれしい限りである。

 今回はヒマラヤ初見参のメンバーもいたことから、往復のキャラバンに工夫をこらし、往路はコングマラ、帰路はチョラパス、レンジョパスという5000m級の三つの峠を越えた。初登頂は次回に賭けるとして、参加した隊員個々がヒマラヤを体験して充溢間を味わったようだが、これが今回の最大の収穫ではないだろうか。もろもろの反省点を踏まえて、今後もシニアを対象とした事業を継続して起動に乗せていきたいと思っている。