●対象:笠ケ岳/穴毛谷第2尾根
●期間:4/7〜8
●メンバー:三好(秀峰登高会)、榎並(日本山岳会青年部)


 穴毛谷第2尾根のP4にて、先行パーティーの竹ペグを利用し、懸垂を試みたところ、それが抜ける事故未遂を起こしました。幸いにも、バックアップをとっていたので大事には至りませんでしたが、2人目の懸垂の際に支点が抜けた場合や、バックアップを取っていなかった場合には、両側とも急傾斜である現場の場所がらからして、死亡事故につながる可能性もあったことは否定できません。以下に内容ををまとめます。

 

1. 経緯
 登山体系に、「ここは固定ザイルが無ければ絶対に戻れない」(「ぜったい」っていうことないのに…)と書かれた問題のP4の懸垂地点に10:00着。
 ここまで、(なぜかこんな場所なのに)先行のトレースがあって、いぶかしがっていたのだが、P4の懸垂地点で始めて、先行パーティーの姿が見えた。3人パーティーで、ここの懸垂を終え、コルのすぐ先のピナクルのトラバースにロープを出しているところ。懸垂地点には、彼らが使ったと思われる残置スリングがあった。どれくらい埋めたあるのかはわからないが、上の雪はしっかり踏みこまれており、また引っ張ってみても抜ける気配はない。3人が懸垂した直後なら問題なかろうと思い、この残置スリングを使い懸垂することとする。
 25m以下の懸垂であれば、もう1本のロープで確保をし、バックアップを取れるが、すとんと切れた下のコルはよく見えないものの、25m以上の懸垂が必要と思われた。そこで「25m以上ありそうだし、バックアップのザイル使えませんね」と私は言ったが、三好さんに「いちお、なんかバックアップを取ろう」と提案された。
 残置スリングに掛けた自前のロングスリングを、残置スリングから上に延ばして、バイルをその中に差し、それを三好さんが踏んでもらった状態で、榎並から懸垂開始。
 出だしの5mくらいは、歩いてゆける傾斜なので、支点に力を掛けないように進む。が、その先が5mほど、ハングした雪壁となっている。そして、その下で一端、2mほどの雪のバンド状の緩傾斜になったあと、コルまで15mほどのこれもハングした岩壁。5mほどの雪壁で、少しザイルが延びる感じがあったが、私は「どこかに引っ掛かていた分が伸びたのだろう」と思い、まったく気にならなかった。
 このとき、残置スリングの先の竹ペグが抜け、バックアップのバイルの支えだけで、懸垂してる状態になっている。(三好さんは、「ひとまずバックアップで十分支えきれているので、懸垂途中で私にどうこう言ってもしょうがない」との判断で、何も私には伝えていない)
 バンド状の緩傾斜の出口(コルまでの15mの岩の一番上)にしっかりとした木があり、岩壁に下りる前にここで一回、ピッチを切ることが、一瞬頭に浮かんだが、完全に木にぶらさがった状態で、ピッチを切らなければならないのに面倒くささを感じ、そのまま下りた。(この件は直接、今回の失態にはつながっていないが、こういう面倒くさがる姿勢に、そもそもの問題があると思う)
 下について、ロープは引けることを確認して、「来ていいです」とのコールを上にする。
 けっこうたっても、下りてくる気配がないんで、再度コールすると、竹ペグが抜けて埋めなおしてるとの声。(愕然とした…)埋めなおして竹ペグに加重をかけないように、まずザックを下ろし、かつ途中の木でピッチを切って三好さんが下りた。幸いにも、バックアップを適切にとってもらったおかげで、事故につながらず済んだ。
 しかし、1人目のときに何ともなく、2人目の三好さんのときに支点が飛んだ可能性は十分考えられる。そうなれば、例えバックアップをとっていても、ザイルの長さ分の墜滑落となり、ただの雪斜面ならともかく、今回の現場ではアウトだったでしょう。また、先行パーティーの2・3人目で、支点が飛ぶ可能性もあったとも言える。(あとで追いついたら、面識のある人達だったが、十分な実力のあるパーティーだった)
 その意味では、誰の懸垂のときに支点が抜けるかという可能性の分類の中では、一番被害の少ないケースが今回起こったといえる。他のケースにならなかったのは、ただたんに運が良かっただけ、としか言いようがない。

 

2. 原因の分析
@竹ペグの長さが20cmくらいであり、また十字ではなく1本しか埋めていないので、支点の支持力が弱かった。
A @であることを何も確認することなしに、すぐ前に3人懸垂しているからとの理由で、そのまま支点を使った
B気温が高く、雪が緩みやすい状況であった。3人パーティーの懸垂のあとのわずかな時間で、支点の上の雪の支持力が弱まっていたのでは?

 

3. 今度の教訓
@自分で竹ペグを埋める場合には、十分な長さ、太さのものを使う
Aバックアップは必ずとる
B先行パーティーの使った竹ペグでも、自分達でセットしなおす、または雪を念入りに足す等、なんらかの対応を取る(残置支点が安定していたのに、それを掘り起こすことで、かえって危険になる場合も考えられるので、一概には定義つけれない。ただ、今回が無防備すぎたのは確かである)

 

4. いちお山行全体の記録
 
竹ペグ懸垂の失態で、すっかり萎えて、私はコルから「下りましょうか」と弱気だったが、やる気十分の三好さんに引っ張られ、いちお登ってきた。問題のP4のほかに1箇所度竹ペグ懸垂するとこがあるほか、トレースなしで先行する場合(結局、1日目は先行パーティーについてくだけで、2日目だけ、我々が前に出た)かなりの部分をザイルを出すことになると思われる。
 また、一の沢側が岩壁になっている分、ただの雪稜と違う、威圧感がある。ただ、けして特にムズカシイわけではない。新穂高温泉から取付きへ1時間というアプローチの近さ、槍穂を背に登れるロケーション、終了点から1時間あまりで笠ヶ岳に立てること、などを考えると、そう登ってる人はいないのでしょうが、実は素晴らしい掘り出し物の雪稜ルートではないか。
 途中からは、へこんでた気分から、立ち直り、楽しんではきた。ただ竹ペグの件さえなければ、天気は絶好だし、楽しくかつ充実した山だったのが、引っ掛かるものを残してしまったのが情けないです。

 

5. コースタイム
4/7(快晴)  新穂高温泉7:35 取付8:50 P4下稜線9:55 P2先コルTS18:00
4/8(快晴) TS5:10 稜線7:20-7:30 笠ヶ岳8:40-9:00 クリヤの頭11:30-11:45 新穂高温泉14:30