●対象:南ア深南部継続遡下降
 逆河内〜中の尾根山〜蓬沢(下降)〜南池口沢〜池口岳〜ダルマ沢(下降)〜リンチョウ〜光岳
●期間:8/15〜19
●メンバー:榎並(日本山岳会青年部)、橋本(東京大学WV部OB)


 当初、飯豊の継続遡下降に行く予定が。後輩の事故で中止に。事故直後で山に行くことに抵抗もあったが、連休をゴロゴロ過ごすのは本意ではなく、一人で南アの遡下降に行く予定だった橋本氏に電話した。そして1時間余りの電話で、あれこれ継続のルートの案を話し、この計画が出来上がった。

14日
静岡の実家に里帰りしてた橋本さんと金谷駅で落ち合い、タクシーで寸又峡温泉に入る。イベント用の舞台があり、その上にマットを広げ快眠する。


15日 (曇) 
 5:45発。南ア全山縦走の最後の難関として悪名高き、寸又峡林道を歩き千頭ダム(8:10)。その上から入渓し、寸又川通しに逆河内出合まで進もうとするが、本流は茶濁し増水している。肩を組み、渡渉を試みるが危険を感じ、流れの途中で引き返す。
 地図にのっている上西河内左岸へ続く吊橋はワイヤーがかかるのみで、使用不可能。仕方なく、50m程登り返して、日向林道まで戻り、これを歩いて大きく迂回することとした。
 地図の家屋のマークのある番屋(2階建てのやけに立派なものだった、誰が住んでんだろう?)の手前の支尾根を下り、最後15mの懸垂で再入渓(12:10)。ここから長い間、河原状でまったく平凡。数カ所で林道から続くと思われる吊橋が上をまたぐが、50m以上の高度差があるものもあり、驚きだ。
 柿取沢出合(16:15)手前から、ようやくゴルジュ状となる。深くとも腰ぐらいで突破できるが、側壁が高く、泊まり場に困る。
 そのうちに、ハングした4m滝に行く手を阻まれる。これを突破するには時間が遅く、大沢(1060mで出合う地図で水線の入った沢)出合の上流側の斜面を登り、わずかな平地を見つけ、ここで泊まることとする。すぐ横が大沢のゴルジュまで10m程切れているので、念の為ザイルにつながって泊まった。


16日 (雨のち曇)
 夜半から雨。止むまで待って、8時発。昨日より水が増えている。4m滝はロープを出し、左のチムニー状を10m登る。滝上の右側には、絶好の幕場適地があり、ここまで行けば良かったと後悔…。
 この先もゴルジュ帯が続く。水の流れが強く、へつりと渡渉で進む。
 1箇所、ゴルジュを左から高巻くが、ここは露岩が出てるので1ピッチロープを出す。上越のそう簡単には抜けない草付に慣れてると、ポキポキ折れる木と泥壁の巻きが怖い。全行程を通して、こうした高巻きで幾度もロープを出すこととなった。
 やがて沢の名前の由来になった「逆」蛇行の部分にかかる。地図で測ってみると、直線距離200m程を1000m以上かけて流れていることとなる。この途中の最狭のゴルジュは、水の流れが強すぎ、腰あたりの深さでもう前進不能。仕方なく大きく巻いて、右の尾根に出る。
 尾根に出て反対側へ下れば、ショットカットできると思っていたが、地図をよく見ると、1184mの小ピークまで尾根を登ってから出ないと、下流に戻ってしまうことが判明。「日本百名谷」の紀行文に、「高巻いてる内にリングワンデリング??し、もとの場所に戻ってしまった」とあり、「そんなバカはしない」と思っていたが、あまりの沢の蛇行に感覚が鈍ってしまうようだ。
 1184mPに12:25。15mの懸垂で、首尾よく「逆」の反対側にショートカット完了。
 さらにゴルジュ状が続くが、やがて両岸が開けてきて二俣に着く(15:50)。釜淵の手前の広い河原まで進み、ここを幕場とした(16:30)。
 流木が豊富で、焚火する。ただ、焚火の下手な我々は、この日以外、「夕立で薪が湿ってる」などと理由をつけ、焚火を断念した…。
 

17日 (曇)
 5:10発。幕場すぐ上の釜淵と呼ばれる5m滝から始まるゴルジュは右から、さらにその上のゴルジュ帯も右から巻く。次の10m滝は左から大きく巻き(途中の泥壁で1ピッチ、ロープ使用)、枝尾根を越えた。二俣下部では、釣り師のゴミを見かけたが、ここまでくると人の気配がなくなって、深山の雰囲気が心地よい。
 やがて40mの逆河内大滝。圧倒的な水量でなかなか見事、ここは右の樹林の斜面を簡単に巻けた。
 二俣(8:40)を岳薙沢に取り、平凡な河原を詰め1720mの二俣(10:20)を右に。大ガレに吸収される沢身から、早めに左に逃げ、中の尾根山の東の稜線に11:50に立った。
 ここまで沢中2泊を要したことを振りかえると、逆河内はなかなかの大渓谷といえよう。同じ深南部で「百名谷」に取り上げられている栗代川が、ゴルジュとそれ以外の長いゴーロの部分との落差が大きいのに比べ、こちらは最後まで楽しめる内容であった。
 栗代川が比較的記録を見るのに対し、こちらはほとんど見かけないのはもったいない気がする。(まあ、継続せず、そのまま下りても4日はかかるというのでは、そんな人はこないか…)
 稜線から蓬沢の支流を下降するが、これがガレガレに深く侵食された醜い沢で、荷下げorザック落としなど苦労した。蓬沢本流との出合に13:25-13:40
 本流は、ゴルジュと小滝が連続し変化に富んだ渓相で、釜ポチャ飛びこみなど、飽きることがない。最後に40mの大滝登場。左側を2ピッチの懸垂で下りきると、沢は大きく開け南池口沢との出合となり、ここで泊まることとした(16:50)。


18日 (曇時々晴)
 
5:10発。30〜50m級の大滝を3つ掛ける、南池口沢を遡行する。
 まず1本目の40m滝。左側の急な枝沢を詰め、落口と同高度まで上がり右へトラバースを試みるが、脆い岩場にぶつかり1ピッチロープを出す。今まで樹の生えた沢は高巻きが簡単というイメージがあったが、巻き道のはっきりした奥秩父の沢と違い、こうした山深い場所では、思わぬ露岩や悪い泥壁などに神経を使い、決してそうはいかない。特に高巻きのルート選択は、草付のお陰で先の見通せる多雪地帯の沢にはない勘が求められる気がする。
 10mの懸垂で沢に戻ると、しばらくは平らだが、標高1740mの三俣状(7:40)を右に回ると、一変する。行く手をぐるり半円状の岩壁が囲み、右側の枝沢に50m、本流に30mの大滝がかかる。思わず、驚きの声を上げる見事な景色である。ここは所々、露岩の混じる左の藪のリッジを登った。
 小滝の連続を行くと、最後の30mの大滝。ここは右から大きく回りこんで巻いた。
 沢床に下りると、後はほぼ平坦な穏やかな流れが詰めまで続く。3つの大滝の「動」から詰めの「静」のダイナミックな移ろいに、ますますこの沢に魅了されてしまう。掘り出しもの秀渓と言えよう。
 稜線に10:55。当初は、ダルマ沢1730m三俣の中俣を下降する予定だったが、昨日の蓬沢支流のガレ沢に嫌気がさし、等高線の緩い1940mの二俣の左俣を下りることとする。美しい継続遡下降とは登山道に出ないように繋ぐものだと思うので、稜線のはっきりした踏み跡を歩くのには少し抵抗があった。が、下降点11:15-11:25で、1940m二俣12:15-12:20と難なく下りれ、これは正解か。
 この後、1730m三俣までは滝の連続となる。特に二俣下の2段30m滝は、下から見上げるとゴルジュ帯の最後の城砦のようで見栄えがする。懸垂を3回交え、三俣に14:05。あとは平凡な流れを、リンチョウの広河原まで進み、ここで泊まる(16:30)。


19日 (曇時々晴)
 単純な私は、「リンチョウ」のように独特な響きな地名を見つけると、行きたくなってしまう。前から気になっていたこの沢は、継続の最後を飾るのふさわしい。
 5:15発。沢自体は、ゴルジュ帯が1箇所あるほかは、特に何もない。ただ、このゴルジュ帯の3つ滝はそれぞれ3m,3m,7mといった規模だが、この山域では珍しく直登可能なので、楽しめた。
 オニクビリ沢出合8:30。詰めは、延々と続くガレ沢を嫌い、早めに左の池口岳からの稜線に逃げることした。(2100m付近で滝になって出合うルンゼを登れば、もっとおもしろかったかもしれない)
 2286m標高点付近で登山道に出て、遡下降にピリオドを打つ(10:40-11:10)。
  朝は快晴だった空も、いつの間にかガスに覆われたのが残念なところだ。結局、全山行を通し、すっきり1日中晴れた日はなかった。
 登山道を辿り光岳に12:15。当初の計画では、欲張って信濃俣河内下降も考えていたが、やはり登山道に出てしまうと気合いが入らない。こじつけの継続な気がしてしまうのだ。
 すっかり妥協し、光小屋でコーヒーを飲んでのんびりしたあと、13:00発、一気に易老渡へ下りた(17:10)。遅い時間の下山なので、風呂・メシは半は諦めていたが、光小屋で予約したタクシーが予定より早く来てくれてたお陰で、南信濃村の「かぐらの湯」でありつけた。
 平岩駅から豊橋に出て、大垣夜行で翌朝には帰京した。