●対象:爺ヶ岳主稜
●期間:4/8〜9
●メンバー:榎並(単独)


 爺ヶ岳は東尾根・南尾根など雪山入門ルートで有名で、バリエーションのイメージがないが、東面に主稜、北稜、冷尾根と3本の雪稜を落としている。鹿島、五竜、不帰に比べると、山のスケールは一段落ちるが、その分、週末で取りつくには気が楽だし、もっと登られていいのではないか?
 が…いくら「気が楽」と言っても、一人で行こうというのは、ちとおかしいんだろうな?
 そもそもこの山は3月の会津朝日岳の痛恨の敗退以来、1ヶ月ぶり。1ヶ月、まるきし山に行かないのはこの1年で始めてなんじゃないだろうか?敗退ですっかりふさぎこんで、モチベーションを失い、ゴロゴロしてました…。   
 まあでもねえ、いろいろ人と話したりする中で、徐々にまた登る気が沸いてきて、やっぱ山かな、と。誰か見つけて、前から気になってた爺主稜に行ければそれで良かったが、誰もヒマじゃない。しょうがない、谷川あたりの稜線を歩いてくるか、と思うも資料を読む限り、爺主稜は一人で登れないことはなさそう。この1ヶ月のうっぷんで頭に血が登り、単独を決意した。しかも軽量化を優先し、ザイルは持たないこととした。

8日 (晴時々曇) 
 急行アルプスで大町に入る。鹿島東尾根に登る2人パーティーとタクシー相乗りで、鹿島集落まで1400円で済んだ、ラッキー。鹿島のおばばに挨拶し、お茶をご馳走になった後、6:35発。標高1000mのこの場所で、あたりの田んぼはまだ雪の下なのだから、やはり今年は雪が多い。
 出だしの急登で一汗かき、東尾根上に出る頃には、灰色の曇が徐々に切れて行く。切れ切れの青空から、目指す爺ヶ岳の東面が見えて、格好いい。
1978mP先の小冷沢への下降点に着く頃(10:10-10:20)には、すっかり天気は回復。うっすら残るトレースに助けられたが、ペースも上がってきた。正面に望む、主稜は立ってみえるが、1箇所、雪庇状の段差が見える他は、雪がちゃんとつながっており、なんとかなりそうだ。
 一気に小冷沢に下りると、両岸からのデブリが沢幅一杯に広がっている。ついさっきまで曇っていたので気温はそう高くないはずで、危ない状態ではなかろうが、一人で歩くのはおっかない。勘弁して欲しいものだ。
 主稜の末端に11:40、登山体系の記述通り、岩壁状の末端を避け、三の沢側に入る。
 三の沢をけっこう登ってから、三本目のルンゼから尾根に取りつく。ルンゼは特に問題ないが、傾斜はけっこうあるので、一人でノーロープで引き返す気はあまりしない。
 尾根に出て(12:25-12:40)しばらくは、ちょっとしたきのこ雪を右から回りこんでみたりするが、やがて傾斜はぐんと緩む。ところがその先で、東尾根からも見えた、尾根に直角にそびえる5m程の段差に行く手を阻まれる。大きく右手に回りこみ、段差の切れ目から乗り越すが、その上もクレバスが口をのぞかせ、おっかない。右に左に避けながら、急雪壁を登り、尾根に戻る。パートナーがいてもザイルは出さないのかも知れないが、一人だと同じノーザイルでも怖さが違う。つい息を切らしてしまい、その先の緩傾斜帯でバテる。ほんのくるぶし上ぐらいのラッセルだが、一人だとつらい。
 休み休み登り、今度は小ピーク先できのこ雪に阻まれる。左手に回りこみ、ルンゼを直上して、問題無く抜けるが、傾斜はこの尾根で一番強いところであろう。その先の雪壁をひーこら登り、バテたので頂上直下の最後の雪壁との間の、緩傾斜帯にテントを張る(16:10)。
 頂上直下の雪庇の張り出しも、そうなさそうで、明日は問題ないようだ。ただ上まで抜けないことには、もしやのこの尾根のクライムダウンの恐れがあり、安心できない。もう一頑張りした方が良かったか?
 わびしい晩飯を食って、とっと寝ることにする。あーそういえば今日は誕生日、24歳になった。さびしいやら、一方でこのローケーションに一人でいるのは満たされてるようであって…??


9日 (快晴) 
 5:35発。雪庇はほとんどなく、すぐに5:55山頂着。剣がきれいだ。抜けれて良かった。
 真横に、一筋のトレースがついた主稜を見ながら、東尾根を下る。次は、その向こうに見える一段とたった北稜を狙おうか。(もちろん、単独ではなく)
 快晴で春山気分、満喫。やっぱり私は山が好きなようだ。
 途中、あまりの気持ち良さに昼寝したわりには、9:35鹿島着と、早く下りれた。ちょうど街に出るという、おばばの孫娘さんの車に便乗させていただき、締めくくりもばっちしでした。