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2000年
気象講座「夏の天気図の見方」 
2000年
(平成12) 6月29日
山岳会ルーム
講師:城所邦夫
報告:山664(北野忠彦)

気象講座

「夏の天気図の見方」


 6月29、夏の天気図について、特に山行時に役立てることを目的として、城所邦夫会員(元日本気象協会)に話していただいた。気象のほうでは「夏」というと、梅雨のころから8月いっぱいということである。

1、梅雨  入梅は、九州南部の6月5日日頃から、東北北部の6月14日頃まで、南から順次北上していく。
なお、入梅予想は最近は行われなくなっており、確認後に発表される。 梅雨明けも同様である。

 前線に伴う雨域は、寒冷前線は幅40〜50キロメートルと狭く、一時間ぐらいで通過するが、前線通過に伴う温度差、激しい雨、雷等、激しい変化を伴う。 これに対して温暖前線は広い場合には200〜300キロメートルに達し、雨が降り出すと長い。 「ひまわり」画像では雲の中の白い部分は発達域、夜間の「ひまわり」は赤外線像で、白い部分が温度が低い背の高い積乱雲である。

@梅雨のタイプ  梅雨前線上に低気圧が並んで前線がくびれ、間に高気圧が入る、雨、晴れがはっきりしている陽性型、前線が延びてぐずつき型の陰性型がある。 陽性型のときは山行に注意。 陰性型の場合は梅雨だから仕方がないという気になり、心構えができる。 陽・陰性混合型もある。

A梅雨の中休み 前線が北上する北上型は蒸し暑く雲が多い。霧も出やすい。 前線が南下する南下型は乾燥した天気になる。

B梅雨末期の大雨  局地的な集中豪雨が起きやすい。 特に山岳地帯、山間部。梅雨前線の南側に台風や熱低があると、湿舌ができて集中豪雨となる。 等圧線の狭い部分がその目安になる。 梅雨末期に大陸に高気圧があると、梅雨明けにならない。

C梅雨明け  北上型または南下型で梅雨が明ける。 九州北部の7月18日頃から東北部で7月26日頃が梅雨明けとなる。

2、盛夏  梅雨明け10日、夏の太平洋高気圧が張り出し、好天が続く。
鯨の尾型の高気圧ではくびれた部分に寒気が入り、雷が発生しやすい。

3、夏台風  熱帯低気圧の中心付近の最大風速17m/Sを超えると台風と呼ぶ。 夏台風にはいわゆる迷走台風が多い。 台風の進行方向に対して右側半円は危険半円で風雨とも強い。左側半円は台風の進行速度と風向が相殺されて風雨が比較的弱く、可航半円と呼ばれる。自分の行く山の西側に台風が接近すると危険半円に入るので、西側の台風に往意。瞬間最大風速は、最大風速(十分間の平均)の約1.5倍。

4、雷
@雷の種類
  熱い晴天時の午後に発生する熱雷は、不連続線(主に寒冷前線)に伴って発生する界雷、両者が合わさった強い熱界雷、発達した低気圧や不連続線、台風などに伴った過雷がある。

A発生予測  盛夏期にもかかわらず早朝から秋空のように空気が澄み切っているときは、上空に寒気が入っているので注意。山の中腹や山麓で午前中から水蒸気が多く視界がぽやけてきたら注意。 雷雨予報が出ていたなら一応注意。 早朝から日差しが強く、雲海が乱れ(大気が不安定)
午前中から3000メートル級の稜線までガスがかかるようなら注意。
雷三日=通過してから5〜7日安定。

B待避法  ラジオのスイッチを入れて空電をチェック(FMバンドは不可)。 安全な場所(保護範囲)に避難し姿勢を低くする。頭より高いものをかざさない。 保護範囲の中心部の樹木、柱、壁などから2メートル以上離れる。 落雷時には突風(測激風)が発生して吹き飛ばされる恐れがある。金属類は必ずしも体からはずさなくともよい。

 以上、山で天気図をどのように利用し、行動判断に役立てるか、山行に当たって参考になる具体的な内容が多く、有意義な講義であった。    出席者15名。

(北野忠彦)
山664-2000/9 


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