Climbing and Medicine 会報 山 医療コラムより
715号

中高年の登山者とメディカルチェック

大森 薫雄

 近年、中高年登山者が急増し、登山中の突然死が問題となっている。中高年者の特徴として体力の低下と、高血圧症や糖尿病などの疾患を持つ者が多いことが挙げられる。中高年登山者の突然死は、心臓の冠血管の動脈硬化による心臓死か、血圧上昇による大動脈、脳動脈の破裂が多い。これらの、突然死を招きやすい病気は、本人に日常生活では自覚がない場合も少なくない。例えば、糖尿病は全身の動脈硬化を起こして脳卒中や心筋梗塞の招きやすいが、“サイレント・キラー”、つまり、沈黙の殺人者と呼ばれるように、自覚症状がないことが稀ではない。そこで、中高年登山者はメディカルチェックをすることが勧められる。
 メデイカルチェックの目的は、登山によって生じる障害や、潜在性の健康を阻害する因子をチェックすることである。特にメデイカルチェックを受けなくてはいけない人は、
@ 胸が締め付けられるような感じがする人
A ちょっと動いただけでも息切れがする人
B 頭痛や目眩がしてふらふらする人
C 顔や足がむくんでいる人
である。
 問診で重要なことは、今までどんな病気をしたか(既往症)、家族のなかでどのような病気の人がいるか(家族歴、特に心筋梗塞や糖尿病)、また、今までどんな仕事やスポーツをしてきたか(生活歴)、喫煙や飲酒習慣などである。
 検査としては、血液化学検査、胸部X線検査、心電図検査を行なう。心臓に異常が疑われる場合の、危険因子をチェックする特殊な検査法として、負荷心電図、ホルター心電図、心エコー(超音波検査)、心筋シンチグラム、心臓カテーテル(心臓血管造影検査)などがある。負荷心電図は運動を行なわせて心電図の変化をみるものであり、ホルター心電図は小型のレコーダーで24時間の心電図を記録して分析するものである。心エコーと心筋シンチグラムは心筋の動きを画像上に描記して、心筋の運動の異常をチェックするものであり、心臓カテーテルは細いカテーテルを心臓の冠血管に送り込んで、冠動脈の狭窄について、場所と程度をみるものである。
 メデイカルチェックの結果、問題がないか、少なく、登山を行っても良いとなったら、トレーニングをして、筋肉を鍛え、心肺機能を強化して、酸素の摂取量を多くすることである。リスクのある者が、何の身体的準備もなしに登山をするのは無謀である。