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旧版地形図の整理  

 日本山岳会所蔵の旧版地形図については、会報「山」553号から556号に3回にわたり児玉茂氏が解説している。このほど山岳地理クラブが図書管理委員会の委託でそれらの地図の再確認を行い、すべての図幅をリスト化し、データベースとして利用できるようにした。

 所蔵する地図についての解説は前記に詳しいので省略するが、現状は限られたマップケースに漠然と収められているだけなので探し出すのに容易ではなかった。これら約3000点の地図を縮尺別に図名、よみ、測量年、発行年、価格、種別、分類番号を記し、保管場所を明確にすることによりより活用しやすくする事が目的である。

 旧版地形図は、主に近代測量の始まった明治期に発行された、陸軍参謀本部陸地測量部、農商務省地質調査所によるものばかり。これらの貴重な地図がどのような経路で日本山岳会に収まったのか、資料がないので不明である。図書管理委員会の松田雄一氏は地図の寄贈者は高木菊三郎(1888〜1967)か、その家族ではないかと推測している。高木菊三郎は陸軍参謀本部に在籍していた日本山岳会会員(会員番号162、明治41年入会・名誉会員)で、北アルプスの地図を作ったことで知られている。著書に「日本地図測量小史」などがあり「山岳」58年にも寄稿されている。所蔵する地図の中には、参謀本部に近い関係者でないと入手しづらいものも含まれているのでその可能性が高い。

 地図は、陸地測量部発行の1万分1仮製図(東京近傍)は発行された19枚すべて。2万分1迅速図・正式図1377枚、2万5千分1仮製版107枚、5万分1地形図1160枚、20万分1帝国図(ケバ図)283枚、百万分1東亜予知図103枚、農商務省地質調査所20万分1地形図・地質図(英文含む)143枚ほか合計3192枚である。中には5万図の3色刷りのものや、薄い耐水性のものなど珍しいものも多数含まれており、いずれも折り目のない、発行されたままのきれいな地図が大多数である。日本山岳会の貴重な財産として今後も大切に管理していかなければならないものである。

 リストの取り扱いや閲覧方法などは、今後、図書管理委員会と検討しなければならないが、現状はスペースや什器に限りがあるため運用に制限があることは避けられない。保存と活用の相反する課題を両立させるためにも画像のデジタル化を検討するなど、より進化した環境を望みたいものである。

詳細は、管理方法などが明確になるまで近藤宛にメールにて問い合わせください。
email:hikarikon@nifty.com
                                         山岳地理クラブ 近藤善則



 「山」 2008年(平成20年)6月号(No、757)  より

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