中央分水嶺踏査登山活動報告

山形支部

先人の面影偲ぶ分水嶺

 山形支部が担当する中央分水嶺は、山形・宮城県境の関山峠から山形・福島県境尾根を経て米沢市板谷峠まであり、実質的な踏査距離は約125km(地形図上の平面距離は103km)になり、さらに各地点から分水嶺までのアプローチ距離85km超を含めると総踏査距離は210km超になる。分水嶺上に登山道があるのは45
km(44%)であり、残りは薮こぎの連続である

 3月下旬から残雪朋の4月中旬まで5回試登を実施し、最終実施計画案を修正して支部総会に諮り、9月末まで分水領踏査を15回、踏査距離約72km(58%)を延ベ93名が歩いている。10月以降に3回の蹄査を実施し、今年中に踏査距離90km(72%)まで延長し、残り35kmは来年3月中旬から4月下旬の残雪期に踏査を予定している。

 実際に歩いてみると、20m以上の垂直な岸壁に阻まれ撤退、再度ルート工作せざるを得なかったこともあった。地元で「熊の棲」と言われている番城山では、2mを超える密生したチシマザサに悪戦苦闘の薮こぎで、200m進むのに2時間を要する始末。さらにそこらじゆうに熊の糞があり、呼子を吹きながらの踏査であった。また、栗子山では、密生した雑木林のおかげで、平坦な山頂の判別に苦労させられた。つい30年前
まで人馬の往来していた峠道は、車社会の進展により荒廃、今では峠の名称さえ忘れ去られ、分水嶺上に往時の面影をわずかに残すのみであった。

 特に心を動かされたのは水中分水点の横川堰(旧名:助左衛門堰)である。横川堰は宮城県の入ナンバ沢(横川上流)より給水して一枝岩沢に流し、更に一枝岩沢の水を加え、水路とトンネルで山形県上山市の寒沢(萱平川)に流し農業用水として利用されている。
賢者の知恵と執念、そして60年という歳月をかけて明治14年に完成した横川堰は、他県から農業用水を引いている全国唯一の堰であり、往時の苦労が偲ばれる。戦後60年、これまで無計画な森林伐採が行われてきたが、稜線沿いのブナの二次林は野性味あふれた自然に戻りつつある。山形支部は地元の山に腰を据え自然環境の現状を直視していきたい。

  (渡辺 誠)

photo:冷水山分岐から水中分水点に向かうチシマザサの戴こぎ
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